江の島の植物カラタネオガタマ
2022年06月10日 写真&文:坪倉 兌雄

カラタネオガタマ(唐種招霊)Magnolia Figoはモクレン科モクレン属の常緑小高木で原産は中国南部とされ、江戸時代中期に渡来し、暖地の神社や庭木など、観賞用としても植えられています。江の島ではサムエル・コッキング苑や中津宮広場などにも植栽されています。樹高は3~5㍍になり、若木の樹皮は緑褐色で細い縦縞模様があり、枝や葉柄、冬芽などに褐色の毛が密生します。葉は互生し全縁で革質、長さは4~8㌢の楕円形~長楕円形、縁はやや波打ち、表面は濃緑色で光沢があります。花の蕾は前年枝につき、褐色の毛で覆われた薄い膜で覆われますが、開花とともにこの膜(托葉が変化したもの)は脱落します。花期は5~6月、花は黄白色で全開せず半開状になり、直径約3㌢に、花被片はやや厚くふちは紅色になり、花はバナナに似た強い香りを放ちます。





花は外側の萼片3枚と内側の花弁3枚で計6枚の花被片があり、萼片の幅は花弁の幅よりやや広くなり、いずれも黄白色、先端は尖ります。花の中央に丸い軸があり、その下方には雄しべが多数広がるようにつき、上部には雌しべが離生心皮で螺旋状に多数つきます。雄しべの長さは約7㍉、雌しべの長さは約6㍉です。葉が密につくことから、花が葉のなかにうずまって見逃すこともあり、注意して観察する必要があります。花は開花してから1~2日間で散りますが、次から次へと咲くことから10日間ぐらいは楽しむことができます。袋果は10~11月に熟して裂け、赤い種子をだします。カラタネオガタマの葉は常緑で密につき、庭木や生垣などにもよく用いられますが、花芽が秋ごろにつくので剪定は8月までに終えるのが望ましいとされています。名前の由来は、唐の国(中国)から渡来したオガタマ(招霊)の木であることから、カラタネオガタマ(唐種招霊)となり、別名でトウオガタマ(唐招霊)とも呼ばれています。
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2022年06月10日
