続・湘南のお地蔵さま(96) 『鎌介身代り地蔵』
2024年12月8日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(96) 『鎌介身代り地蔵』
葉山町 下山口 中島淳一
逗子駅よりバスに乗り葉山公園前で下車。少し戻り信号で右折し右カーブ手前を左に下ると浄土宗万福寺がある。この寺の前身は近くにあった満蔵院で、当地の領主だった鎌介という人がその寺の本尊薬師如来(現在秘仏)の信仰者だった。鎌介は明応四年(一四九五)に自邸を満蔵院に寄付し万福寺としたと伝わる。
現在の本尊阿弥陀三尊像近くに、厨子に入って祀られるのが鎌介身代り地蔵である。以前は秘仏で十二年に一度の開帳だったが、現在は毎年五月四日の鎌介祈願会の時にも開帳される。右手に錫杖、左手に宝珠を持ち、小さな像だが全体にバランスが良く、お顔はふくよかで衣文の流れも自然で美しい。三浦三十八地蔵尊第二十二番札所である。
名前の由来だが、横須賀市岩戸に三浦一族の佐原十郎義連(よしつら)を開基とする満願寺がある。この寺の聖観音は義連が平家討伐に旅立つ時自身の姿を写させて造らせたと伝わるが、鎌介公もそれに倣って苦しむ人々の身代りになるべく自身の姿を地蔵に写し造らせたという。
身代り地蔵の伝承は全国に数多くあるが血なまぐさい話が多い。そんな中でこの地蔵尊の言い伝えは慈悲の心にあふれている。これも鎌介の人柄と、風光明媚な葉山の地だからこそではないだろうか。