トウオオバコ(唐大葉子)は本州、四国、九州に分布する多年草で、各地の海岸に自生し、江の島では海辺の岩場や岩屋洞窟の入り口付近にも生育しています。
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トウオオバコ(唐大箱) Plantago major var. japonica |
トウオオバコ(唐大葉子)は本州、四国、九州に分布する多年草で、各地の海岸に自生し、江の島では海辺の岩場や岩屋洞窟の入り口付近にも生育しています。 オオバコ(大葉子)と聞けば、人が踏みつけるような路傍に生える逞しい雑草として、また泥で汚れた葉をイメージする人もあるかと思います。 しかしトウオオバコは海辺の岩場に生え、きれいに整った葉とその長い花茎は美しく、路上に生えるオオバコのイメージとは大きく異なることから、昔、外国(唐)から渡来したものと考えて名付けられたとされています。生育環境は海岸・海辺 花期は7~8月 |
![]() 江の島の海辺に生えるトウオオバコ |
仲間のエゾオオバコ(蝦夷大葉子)も海岸の砂地に生え、北海道に多く本州~九州にも分布していますが、江の島には自生していません。 外来種のヘラオオバコは海辺やオリンピック記念公園などでもよく見かけますが、根生葉が細長くヘラ状で、形はオオバコとはやや異なります。路上に生えるオオバコを漢名で車前草(シャゼンソウ)と呼び、車(馬車など)の通り道に生える草を意味します。 このようにオオバコは踏みつけには強いが、他の野草と共生できないデリケートなところがあります。 葉は地面に広がって高く伸びる性質がなく、踏みつけが弱い場所では他の野草にそのテリトリーを奪われて生育できないのです。 近年は道路がアスファルト舗装になり、オオバコの生育にとってはさらに厳しい環境になっています。 オオバコの若葉は食用になりますが、一方、乾燥させた全草は生薬の車前子(しゃぜんし)として、咳止め、下痢、利尿、消炎などに用いられています。 勿論トウオオバコも同じ薬草として用いることができます。 |
![]() ![]() 岩場に生えるトウオオバコ 踏みつけられた路上に生えるオオバコ |
トウオオバコは海辺の日当たりのよい場所に生え、同種のオオバコより大形で葉に毛がありません。 葉の長さは16~50cmで先がややとがります。 花期は7~8月、花茎は直立して40~80cm、長い花穂に花は下から順に咲き上がり、雌蕊が先に熟し、ついで4本の雄蕊が長く飛び出して花粉を散らします。蒴果は上下ふたつに割れて、多数の種子を散らします。 右の写真は仲間のオオバコ(Plantago asiatica)です。和名の由来は、葉が広くて大きいことからオオバコ(大葉子)で、路上に生えるオオバコに比べて形が端正であることから、むかし外国(唐)から渡来したものと考え、トウオオバコ(唐大葉子)になったとされています。 |
【写真&文:坪倉 兌雄 2011-07-16】