江の島に咲く花≪ハマカンゾウ≫ ハマカンゾウは関東以西の本州、四国、九州の海岸に分布し、暖かくて日当たりがよい場所に生育する常緑性の多年草です。
![]() |
ハマカンゾウ(浜萱草)Hemerocallis littorea |
ハマカンゾウは関東以西の本州、四国、九州の海岸に分布し、暖かくて日当たりがよい場所に生育する常緑性の多年草です。江の島では海側の傾斜地や岩場、参道傍、龍野ヶ岡自然の森などに自生し、8月中旬から灼熱の太陽のもと橙色の花弁を上向きに開き、緑の江の島に美しい彩りを添えます。花の命は短くても、咲き誇るその美しさは、疲れた心を癒し、苛立つ心を和らげてくれます。ハマカンゾウの名は浜に咲くカンゾウに由来しますが、一般にはハマカンゾウ、ノカンゾウ、ヤブカンゾウなどをまとめて萱草と呼んでいます。生育環境は海岸、草原 花期は8~9月 |
![]() ![]() 江の島の岩場に咲くハマカンゾウ ヤブカンゾウ(八重咲き) |
萱草は「忘憂草」ともいわれ、中国ではこの花を見て憂いを忘れるという故事があり、「忘れる」に「萱」の文字を当てた(牧野植物図鑑)とあります。 この萱草はヤブカンゾウ(藪萱草)で、古くは中国から帰化したものとされ、雄蕊と雌蘂が花弁状になった八重咲きで、3倍体植物のため結実することはありません。 花の蕾を蒸して乾燥したものを漢方では金針菜(きんしんさい)と呼び解熱に、根は利尿に効果があるとされています。別名を「忘れ草」ともいい、万葉集には5首詠まれています。 わすれ草 垣もしみみに 植ゑたれど 醜(しこ)の醜草 なほ恋ひにけり (万葉集巻第12-3062) |
ハマカンゾウの葉は二列に根生し長さ60~70cm、幅1~1.5cmの厚みのある線形で冬季にも葉は残ります。 花期は8月~9月、早朝に咲く1日花で、細長い花茎(長さ70~90cm)の先に黄色~橙色の花を3~数個上向きに開き、花皮片は6枚で大きさは約9cm、その先はやや反り返り花弁の中央には黄色い筋模様が入ります。 江の島には同じユリ科のワスレグサ属で、ハマカンゾウによく似た花を開くノカンゾウやヤブカンゾウがみられますが、その違いは葉の厚みや光沢、冬に葉が枯れることなどから区別できます。またハマカンゾウやノカンゾウの花は一重ですが、ヤブカンゾウは八重咲きです。 |
![]() 江の島に咲くハマカンゾウ |
【写真&文:坪倉 兌雄 2010-09-12】 |