ハマボッスは海辺に生育する2年草で日本全土、朝鮮半島、中国、太平洋諸島に広く分布しています。
![]() |
ハマボッス(浜払子) Lysimachia mauritiana |
ハマボッスは海辺に生育する2年草で日本全土、朝鮮半島、中国、太平洋諸島に広く分布しています。江の島では日当たりの良い砂地や岩場、崖、かながわ女性センターの裏側の石垣や、通路傍などでその群生を見ることができ、肉厚で艶のある美しい葉は、殺風景な空間に美しい風情を添えて、訪れる人の心を和ませてくれます。ハマボッスはオカトラノオ属で、仲間にはヤナギトラノオ、ヌマトラノオ、オカトラノオ、クサレダマなどがあり、いずれも外観は似ていません。むしろ江の島に自生するアカネ科のソナレムグラ(磯馴葎)に肉厚の葉などがよく似ています。ハマボッスの葉は互生で花は5裂、ソナレムグラの葉は対生し花の先は4裂、これらが両者を識別するポイントになります。花期4~6月で生育環境:海岸、海辺 |
![]() 江の島の海辺に咲くハマボッス |
和名は海辺(浜)に咲き、花序の様子を払子に見立てたものですが、蒴果の形も払子によく似ています。 払子はもともとインドで、獣毛や麻などを束ねて柄をつけ、虫や塵を払う道具として用いられていたのが、のちに法具として使用するようになったとされています。 我が国では鎌倉時代以降、法会や葬儀などの仏具として、禅宗の導師がこれを左右に振り、煩悩を絶ち引導を渡すときに用いるようになりました。 |
![]() ![]() ハマボッスの花 と 萌果 |
ハマボッスの茎はしばしば赤味を帯びて、根元から数本群れて立ち上がり、上方でさらに枝分れします。全草が無毛、光沢のある多肉質の葉は倒卵形で互生し、根生葉はロゼットを形成します。花期は5~6月、花茎はさらに伸びて高さが10~30cmになり、茎頂に総状花序をつけ、直径1~2cmの白い筒状の花を上向きに開きます。花は一見5弁花のように見えますが、よく観察すると基の方はつながっており、萼も緑色で5つに分かれています。蒴果は4~6mmの球形で、熟すと頂部が開口して多数の種子を出し、落ちたところで発芽し、または海流に乗って散布され分布を広げます。 |
【写真&文:坪倉 兌雄 2010-05-22】 |